生と死

daibosatsu passs

理化学研究所の笹井副センター長が自殺をされたとのこと。
笹井先生には、再生分野への転身の際に、突然メールを投げかけて色々ご相談に乗っていただいた思い出があるだけに、非常に残念で、悲しくて仕方がありません。
同時にこの件には、「笹井さんでさえも、自殺してかたをつける という帰結に達してしまうのか」という絶望というか、怒りというか、説明をするのが難しい感情でモヤモヤしています。


希死念慮と向き合う | 社会不安障害と向き合うという記事がtwitterでRTが流れてきたので、自分のためのメモ。

そんなとき、ちょうどオーストラリアで自殺予防会議 (2014 National Suicide Prevention Conference) が開催されていることを知り、そこで発表された精神疾患と関連した自殺の予防と自殺企図後のケアに関連する研究 (Skehan et al. 2014) が私の注意を引いた。

癌で生死をさまよった人が生還した話については世間に溢れるほどあり、どこでも聞ける。話すほうも何のスティグマも感じない。
精神疾患に起因する自殺企図経験や希死念慮から回復した話については蓋が閉じられたままだ。誰も語ろうとしない。
自殺企図した人々を調査した結果、自殺しようとしたそのとき人々が共通して抱いていた感情は、「絶望」と「痛み」であり、その心の痛みは決して終わることがなさそうに思われたと言う。
さらに調査結果の暴いた驚くべき点は、「自殺する者は残される者のことを考えず自己中心的である」という一般に根強い先入観に反して、実際に自殺を試みた人々は、そのぎりぎりの瞬間まで、家族や愛する人々のことを思っていたこと。それなのに死を選んだのは、「自分が生きていては、家族や愛する人達が幸せになれないから」だと言う。それは精神疾患により捻じれ絡まった信念だった。
(Summarized from ABC News and The Gardian; Originally in Skehan et al. 2010)

穴の底で、うずくまったまま、本当に私は役に立たない存在だと思う。生きているということ、そのこと自体が間違いなのだと思う。障害にまみれて生まれてきて、そのせいで周りに不和をもたらしてきた。私が外に出ていったところで、世界に不幸が増えるだけなら、このまま、消えることが最良である。この穴の中で命を終えて、様々な虫に食べられていって、きれいにさっぱり消え、土に還りたい。そのとき、長年の苦悩から解放されると同時に、私の存在から生じていた不和も消え、世界は正しく機能し始めるだろう。

今回の希死念慮は、以前、特にSADの治療を受け始める直前に頻繁に起こっていたものとはちょっと違っていた。
明らかに異なる点は、今回の希死念慮を抱いていた間、私には決して実行に移さないという確信があったというところだ。
その確信はどこからきたのか。それは、「私は本当に死にたいと思っているのではない」という知識からだ。別の言い方をすれば、「脳の特殊な状態によって、死にたいという幻想を見せられている」という知識だ。
そこには、「私は本当は生きたいのであって、健康な状態であれば、希死念慮を抱くことなどないのだ」という自信があった。
希死念慮自体が外在化されている。だから今回のことで、不安や自動思考を外在化していくという認知行動療法で学んできたスキルは確かに活きていると実感した。
そして、最も重要なのは、希死念慮を外在化するのと同時に、死への幻想の只中にある自分を許せたことだ。

穴の底にいる者に向かって、地上から穴を覗き込んで諭そうとするのは簡単だ。「死のうと思うなんて我儘だ」、「死のうなんて弱い者の考えることだ」、「逃げるな」、「人生、諦めてはいけない、生きていれば開けてくるはずだ」、「残される者の気持ちを考えろ」、「絶対に死のうとしないと約束しろ」、「そんなところにいても仕方がないってなんで分からないんだ、さっさと出てこい」 ...
そんな数々のアドバイスは、希死念慮に対する誤解から生じる。死への希求は本人の自由意思によるものでなければ、本人が選択しているのでもなく、本人に容易にコントロール可能なものでもない。だから理屈で処理できるレベルの問題ではない。地上レベルから言われても、何も変わらない。
パドラさんは地上から穴の底まで降りてきて、私がうずくまっている横に座り、自分の妹が死の近くにいたときのことを語ることで、精神上にある特殊な場を私と共有し、私が自分自身の力ではどうにも変えることのできなくなっていた暗闇で凍りつつあったものに明かりを灯した。すると、「元気になりたい」という気持ちが溢れてきた。


生まれることのできなかった小さな世界

yuki

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